Scroll

葉山有樹展実行委員会では、稀代の陶芸家葉山有樹の展覧会「葉山有樹展 虹の彼方に」を千葉県匝瑳市の由緒ある檀林「飯高寺(飯高檀林跡)」で開催します。

葉山は1961年 佐賀県有田町生まれ。1975年当地の窯元に入社。1985年、佐賀県山内町にて「葉山有樹窯」開窯し、今日まで当地で制作を行なっています。
古今東西の人類が育んできた文明から生じた文様や文化の探求と肥前陶磁の伝統に裏打ちされ超人的な技巧が際立つ作品で注目を集めています。近年は、壮大なインスタレーションにも取り組んでいます。また、制作過程で表される文様を自身の解釈で編む童話や小説も手掛けるなど、旧来の陶芸家の概念を超越した表現が注目され、近年は海外でも積極的に活動を行なっています。

会場となる飯高寺(飯高檀林跡)は、天正8年(1580年)ごろ創設された日蓮宗の僧侶のための学問所です。明治5年(1872年)に発布された「学制」により明治7年(1874年)に閉鎖されるまで294年間我が国の最高学府として、多くの優れた僧侶を輩出してきました。今日は立正大学にその理念が引継がれています。
中心にそびえ建つ大屋根を擁した講堂は、徳川家康の側室、お万の方が寄進、その後、火災に遭い1651年に再建されました。この講堂は千葉県最大の国指定の重要文化財で、境内には総門、鐘楼も含め多くの文化財、歴史遺産が多く残されています。急な石段を登り総門をくぐり抜け杉の巨木に囲まれた参道沿いに歩みを進めると、やがて講堂の豊かな大屋根が私達を懐深く出迎えてくれます。
人里離れた自然に囲まれ、学問が育てた風情は荘厳で畏怖の念を抱くほどです。

出展作品は葉山が2018年9月30日~11月18日まで明治維新150周年を記念し開催された「肥前さが幕末維新博覧会」の際に企画され佐賀県立美術館で開催された「三人展-Forward Stroke 明日への眼差し-」に出品した「有為転変図」を飯高檀林跡本堂内に再構成するものです。
本堂内に本尊を望みつつ、内壁沿には今日の文明社会が育んだ森羅万象、栄華と退廃を緻密に描いた陶板を拡大したパネルを円弧状に配置し、また中央には、波紋を描いた大鉢を設置し、思考と瞑想の空間を創造します。

今日世界を覆う強固な利己主義は、平然とした環境破壊と他者への不寛容を産み、あたかも怖れを知らぬが如き所業と言わざるを得ません。今こそ自然の営みと、人類が培ってきた叡智に再び目を向ける時間と環境が必要だと強く感じます。この展覧会は、今を生きる私達の使命を思い起こすために一時、現実と離れ静かに向き合う場と時間を提供します。

葉山有樹
Yuki Hayama
陶芸家 ・ 著述家
  • 1961年
    佐賀県有田町生まれ
  • 1975年
    有田町の窯元にて修行
  • 1985年
    佐賀県武雄市山内町にて開窯
  • 1991年
    「細密画の世界展」 東京アメリカンクラブ
  • 1996年
    執筆活動を始める
  • 1998年
    「葉山有樹展」 O・A・Gドイツ文化館
  • 2007年
    「A Pattern odyssey 葉山有樹展」 spiral
  • 2007年
    「Ceramics Odyssey YUKI HAYAMA EXHIBITION」
    フィンランド・デザインミュージアム」
  • 2007年
    「魚になった少女」 出版記念展 spiral
  • 2007年〜08年
    フィンランド、iittala社 アラビア窯アートデパートメント滞在制作
  • 2008年
    「Neo Japonisme - 日仏友好150周年記念展 - 」
    横浜山手西洋館
  • 2010年
    「空飛ぶだんごむし」 出版記念展 spiral
  • 2011年
    「KAITEKIのかたち ~アートと技術の化学反応~ 展」 spiral
  • 2012年
    「工芸未来派」 金沢21世紀美術館
  • 2014年
    「道後オンセナート2014」 HOTEL HORIZONTAL「ふなや」
  • 2015年
    「Japanese Kogei Future Forward」
    The Museum of Arts and Design
    米国・ニューヨーク
  • 2016年
    「YUKI HAYAMA EXHIBITION | BEAUTY OF LIFE 葉山有樹展 生命の美」
    Joseph Carini Carpets 米
  • 2018年
    「肥前さが幕末維新博覧会 特別展 三人展 - 明日への眼差し - Forward Stroke 」 佐賀県立美術館 佐賀
  • 2021年
    「The Garden of Dreams Porcelain Stories by Yuki Hayama」
    ippodo gallery
    米国・ニューヨーク

出版

  • 2002年
    「千年の華 - 細密画の世界 - 葉山有樹作品集」
  • 2005年
    「詩想の旋律 葉山有樹作品集」
  • 2007年
    「A Pattern Odyssey 文様をめぐる 450万年の旅」
  • 2008年
    「魚になった少女」 絵本
  • 2008年
    「神話の波紋 - 玻璃と剣」 小説
  • 2010年
    「空飛ぶだんごむし」 童話
  • 2012年
    「種子集」 短編小説集
  • 2018年
    「mutability - 無常 - 」 作品集

  • タイトル

    葉山有樹展 虹の彼方に

  • 会期 / 日時

    2022年4月13日(水)~30日(土) /
    9:00~17:00 / 会期中無休
    ※4月24日(日)のみ14:00開場

    関係者・プレスプレヴュー : 12日(火)
    作家会場滞在日 : 12、13、14、15、16、17、22、23、24、29、30日

  • 入場料

    無料

  • 会場

    飯高寺(飯高檀林跡)
    〒289-2141 千葉県匝瑳市飯高1789

    アクセス / 車 :
    銚子連絡道路横芝光インターチェンジから車で約20分
    公共交通機関 :
    JR総武本線八日市場駅から市内循環バス(飯高・豊和循環)
    「飯高仲台」下車徒歩約5分
    (循環バスは日曜祝日運休)

  • 主催

    葉山有樹展実行委員会
    (有限会社椿建築デザイン研究所、銀座一穂堂、株式会社NINO、葉山有樹窯 実行委員会委員長:椿邦司) / 葉山有樹

  • 後援

    匝瑳市、匝瑳市教育委員会

  • 特別強力

    本山堀之内妙法寺

  • 協力

    有限会社椿建築デザイン研究所、銀座一穂堂、葉山有樹窯、株式会社NINO

  • 施工設置

    スタジオ広遊

●2018年9月30日~11月18日まで佐賀県立美術館で開催された「三人展-Forward Stroke 明日への眼差し-」に出品された 「有為転変図」を飯高檀林跡本堂内に再構成する

●本堂内(H4600 W9300 D7360)に本尊を望める余地を残し、内壁沿に作品パネルを円弧状に展開

●本作品は36分の1サイズの陶板に緻密に描かれ焼成された後、高精細なスキャナーで読み取り出力されたデータを基にパネ ル化したインスタレーション

●会場中央には波紋を描いた大鉢に水を湛える

●2018年9月30日~11月18日まで佐賀県立美術館で開催された「三人展-Forward Stroke 明日への眼差し-」に出品された 「有為転変図」を飯高檀林跡本堂内に再構成する

●本堂内(H4600 W9300 D7360)に本尊を望める余地を残し、内壁沿に作品パネルを円弧状に展開

●本作品は36分の1サイズの陶板に緻密に描かれ焼成された後、高精細なスキャナーで読み取り出力されたデータを基にパネル化したインスタレーション

●会場中央には波紋を描いた大鉢に水を湛える

虹の彼方に

日は昇り、そして沈む。
春風は何時しか暑い夏を運び、木々の葉も生気に満ちて青く輝く。
暑い夏も過ぎれば、涼風と共に木の葉も色づきはじめ、美しい色に染まる。
やがて葉は冷たい風と共に散り、山々には雪が舞い、暗く長い冬が来る。
日差しの中で山に積もった雪景色もまた、美しい姿を見せ、春の予感を告げる。
そうして自然は秩序ある変化を繰り返す。

人もまた変わりゆく。
幼き春から若き暑い夏を過ぎると深い思慮をもつ秋となり、やがて衰え人生にも冬が来る。
しかし、自然界とは異なり、新しい春は巡って来ない。
秩序ある変化ではなく、文明の発展は時に無秩序が積み重なり、やがて滅びに至る。
幼いころはあんなにも純真な心を持っていた人が、成長するとともにこうも変わり果てるだろうか。

想像以上に速いスピードで変わりゆく自然界に危惧を感じる。
未来図を予測すれば「有為転変」の図が脳裏に過る。
「有為転変」万物は同じ所で留まることなく常に移り変わり行くもの。
最も危惧すべきは、その過ちをひた走る現代に生きる者に、その酬いは来ず、
何の罪もない未来の子供たちがその犠牲となる事である。

日は昇り、日は沈む。
地球の誕生から50億年。
人類の誕生は500万年。
美しい青き水の惑星は人類の母体であり最も大切な存在。
共生の根幹を忘れ目の前の利益にひた走って来た人類は、母なる自然界に寄生してしまった。

「虹の彼方に」未来への希望の光は私達の生き方に在り、失っている純真な心に戻ることである。

自然は決して手助けはしないが、いつも傍にあり、静かに私達を見守ってくれている。

葉山有樹